千尋を目指す思索の渦

どーも。先哲の思想に触れるのが好きな学生です。

#1【まったり物理化学演習】実在気体の状態方程式を還元状態方程式に結びつける

 最近物理化学にハマっているので、ちょっと問題演習をしてみよう―というのが、本記事のテーマです。

 

問題の内容

 Berthelot(ベルテロ―)の状態方程式

p=\frac{RT}{V_m-b}-\frac{a}{T{V_m}^2}

において、臨界点は次のように記述される。

p_c=\sqrt{\frac{aR}{216b^3}},T_c=\sqrt{\frac{8a}{27bR}},V_c=3b

 

 このとき、p_rV_r,T_rを用いて表せ。

 

→(引用元)http://web.tuat.ac.jp/~tkakomon/h30/9.pdf

 

テーマ

 上記問題のテーマとしては、”実在気体の状態方程式(EoS)”と”還元状態方程式”でしょうか。もっとも、数式変形がメインなのでどっちの知識が欠けていても解けちゃいそう…

 

 答案

 まず最初に、与えられたベルトローの状態方程式状態関数をすべて換算変数で表してしまうところから始めましょう。

 p_rp_c=\frac{RT_rT_c}{V_rV_c-b}-\frac{a}{T_rT_c{V_r}^2{V_c}^2}

 

 これに、これまた問題文で与えられている臨界状態時の状態関数を代入していく。

 p_r\sqrt{\frac{aR}{216b^3}}=\frac{RT_r}{3bV_r-b}\sqrt{\frac{8a}{27bR}}-\frac{a}{9b^2{V_r}^2T_r}\sqrt{\frac{27bR}{8a}}

 

  左辺をp_rだけの形にしてみると式変形がめっちゃ捗りました!

 p_r=\frac{8T_r}{3V_r-1}-\frac{3}{{V_r}^2T_r}

または… 

 (p_r+\frac{3}{{V_r}^2T_r})(3V_r-1)=8T_r

 

補講

 Dietericiの還元状態方程式を求めよ。

 

感想

 van der Waalsの状態方程式から還元状態方程式を導いたときと全く同じ手順で導出することができました!

 前者と後者ではパラメータの意味合いも違いますが、それ以外には右辺の第二項の分母に温度が掛け算されているくらいです。それが、実際にBerthelotの還元状態方程式ではT_rとして第二項の分母に取り残されています。

 

考察

 注目したいのは、還元状態方程式になると実在気体の記述に寄与していたパラメータが消し去られてしまっていることです。

 つまり、気体の換算状態(還元状態)における状態関数の間の関係は気体の種類に依らず、必ずこの還元状態方程式を満たしている、と言えるのです!

※とはいっても、球形分子では当てはまるのですが、極性があったり棒状になったりしてくるとなかなかうまく当てはまらないのも事実です……(あくまで、近似は近似ってことですね)。また、ベースにする状態方程式によっても還元状態方程式の形は変化します→補講で確認。

 

☆このことを、”対応状態の原理”なんて言ったりします。

☞無数にある実在気体を、一括に理解する(傾向を把握する)のに便利。

 e.g.)等温線を換算変数T_rを用いて表すと、複数の気体のデータを載せても一本の曲線しか得られない

 例えば、T_r=1i.e.臨界温度の等温線を眺めてみると、そのときの残りの二つの換算変数の間には以下の関係式が成り立っている。

 p_r=\frac{8}{3V_r-1}-\frac{3}{{V_r}^2}

 

 アトキンスには面白いことが書いてあって、この対応状態の原理の裏を返せば、(還元状態方程式では消去されてしまっている)二つのパラメータa,bだけで理想気体からのズレを記述できてしまっている、と言える。

 

 

補講の答え

 Berthelotのときと全く同じ手順でできる。

Dietericiの状態方程式

 まず、臨界点での状態関数は以下の通り与えられる。

 p_c=\frac{a}{4e^2b^2},V_c=2b,T_c=\frac{a}{4bR}

 

 これを用いて、以下計算。

 p_rp_c=\frac{RT_rT_c}{V_rV_c-b}\exp\left(-\frac{a}{RT_rT_cV_rV_c}\right)

 p_r\frac{a}{4e^2b^2}=\frac{RT_r\frac{a}{4bR}}{2bV_r-b}\exp\left(-\frac{na}{2bRT_r\frac{a}{4bR}V_r}\right)

 p_r=\frac{e^2T_r}{2V_r-1}\exp\left(-\frac{2}{T_rV_r}\right)

 p_r=\frac{T_r}{2V_r-1}\exp\left(2-\frac{2}{T_rV_r}\right)

 

 当初、以下の状態方程式についても還元状態方程式を考えてみようと思っていたのですが、計算すれば分かるのですが煩雑な式の処理がちょっと無理臭かったので諦めました。

Redlich-Kwongの状態方程式

 まず、臨界点での状態関数を計算。ちょっとめんどくさいので過程を残しときます←間違ってたら教えてそ。

 \left(\frac{\partial p}{\partial V}\right)=-\frac{nRT}{(V-nb)^2}+\frac{n^2a}{\sqrt{T}V(V+nb)}\left(\frac{1}{V}+\frac{1}{V+nb}\right)

 \left(\frac{{\partial}^2 p}{\partial V^2}\right)=\frac{2nRT}{(V-nb)^3}+\frac{2n^2a}{\sqrt{T}V(V+nb)}\left(\frac{1}{V^2}+\frac{1}{V(V+nb)}+\frac{1}{(V+nb)^2}\right)

 

 \left(\frac{\partial p}{\partial V}\right)=\left(\frac{{\partial}^2 p}{\partial V^2}\right)=0

 なので、

 \frac{nRT_c}{(V_c-nb)^2}=\frac{n^2a}{\sqrt{T_c}V_c(V_c+nb)}\left(\frac{1}{V_c}+\frac{1}{V_c+nb}\right)

 \frac{2nRT_c}{(V_c-nb)^3}=-\frac{2n^2a}{\sqrt{T_c}V_c(V_c+nb)}\left(\frac{1}{{V_c}^2}+\frac{1}{V_c(V_c+nb)}+\frac{1}{(Vc+nb)^2}\right)

 

 よって、

 \frac{1}{V_c}\left(\frac{1}{{V_c}^2}+\frac{1}{V_c(V_c+nb)}+\frac{1}{(V_c+nb)^2}\right)=\left(\frac{1}{V_c}+\frac{1}{V_c+nb}\right)

 両辺に{V_c}^2(V_c+nb)^2を掛けると、

 2{V_c}^4+3bn{V_c}^3+(n^2b^2-3){V_c}^2+3bnV_c+n^2b^2=0